スペインはバレンシアに来ています。私がディレクターをつとめる日本国際観光映像祭(JWTFF)もメンバーとして名を連ねるCIFFTという世界最大級の国際観光映像祭ネットワークの世界大会が開催されるからです。世界大会では今年の加盟映像祭で得られたポイントによって、今年一番の観光映像を表彰したり、観光映像のあり方のシンポジウムがあったり、各映像祭のディレクターが一堂に会し、来年のあり方を議論します。それがバレンシアで開催。授賞式は明日の27日に開催されます。
CIFFTの本部はオーストリアのウィーンにあるのですが、2021年ごろからはそれをバレンシアで開催するようになったのです。2021年はまだまだCovid-19の影響が強かった頃。その時に観光映像祭も形態を大きく変えて、オンライン中心になります。その時に、受賞の発表はバレンシアの街を紹介しながら発表となりました。それはそれは当時はセンセーショナルで、日本国際観光映像祭は今もそのやり方を引き継ぎやっています。2021年のバレンシアの映像が以下のようなものです。ちょっと長いんですが(受賞発表映像ではあるので)、賞と賞の合間にバレンシアの魅力を伝えるシーンが挿入されています。
さて、そんなバレンシアですが、みなさんもご存知のように10月29日に未曾有の洪水が起こり、多くの方が亡くなるなど、甚大な被害を与えました。実際のところ、バレンシアの中心街には被害はないのですが、世界を駆け巡るニュースで、まずは個人客のキャンセル、国際会議のキャンセル、さらにはヨーロッパの一部の国では二ヶ月間渡航を控えるように、というお達しもでたりしているようです。CIFFTの世界大会も、当初は開催の方向で市当局とも話がついていたのですが、いろいろと変化があり、キャンセルができないようなタイミングで、市としては降りる、ということになり、開催費用の補助がなくなったりしているようです。CIFFTの事務局は、まぁ、もうキャンセルできないので、自分たちの自費で開催。なかなかに波乱の会議となりそうです。
さて、私も11月24日からこちら、バレンシアに来て、他の映像祭のディレクターとさまざまな協働についての打ち合わせた、現在の観光映像のあり方なども意見交換をしているところです。昨日は朝から夕方までは時間が空いたので、バレンシア市内を歩いたり、ツーリストカードを使ってバスに乗ったりしました。
バレンシアの中心街は、洪水があった街とは思えないような平穏な状態です。ただ、地下鉄は一部を除いて運休しているので、移動はいつもよりは大変なんだろうと思います。やはりヨーロッパの街らしく、歩行者と車はもちろん、自転車の通行ゾーンもきちんと整備されていました。その自転車ゾーンを今は電動キックボードで移動する人も多く見かけます。かなりのスピードで飛ばしているので、結構、危険な感じもしました。



ホテルがある場所は、芸術科学都市(Ciutat de les Arts i Les Ciencies)の近くなので、中心街に行くには徒歩だと40分ぐらいかかります。しかし、元々は都市計画研究の人間なので、結構、こういう風に街を歩くのは好きですし、苦じゃありません。朝方から喫茶店の中では高齢のお爺さんが新聞を読みながらなにかしかの議論をしていました。こういう文化と教養のある街、ってのがやはり魅力的です。


さてさて、歩いている間に、コロン市場という場所に着きました。ここはかつては市場だったようなのですが、今は飲食店が軒を連ねるバレンシアのオシャレスポットとなっているようです。ただ、ここに到着したのは朝の9時ごろだったので、みなさん出店の準備中という感じでした。

ここで事件が発生します。上の写真のようなバレンシア市役所の写真を撮っていると、おっさんがスペイン語で話しかけてきます。戸惑っていると、英語は話せるか?俺は警察だ。この近くで、5人組の中国人だか、韓国人だか、日本人だからタイ人だかわからないが、偽札の米ドルを換金したやつがいた。お前は一人か?他の四人はどこにいった?と聞いてくる。パスポートをチェックされ、米ドルを全く持ってないこと、財布にあるお金の状況などを説明したら、どこかに電話して、確認できたから、お前じゃない。協力ありがとう、ということで無罪放免になりました。やっぱり海外にでたら、パスポートをちゃんと所持することが大切だと痛感した瞬間でした。




そして、ようやく本日の当初の目的地、観光地ともなっている中央市場へと到着します。お土産というよりはバレンシア市民向けの食材などを多く取り揃えている感じの市場でした。時折、バレンシアの果物のジュースとかワインとか、食べ歩きや飲み歩きができるような店もあります。奥の方にいくと、普段は月曜日は休みの海産物の市場もありました。その日は一軒だけしか空いてないのですが、ここで食べるカキはたべて大正解。一つ3ユーロ。バレンシア産、ガルシア産、フランス産の中から食べ比べができたりするのですが、ガルシア産のカキがミルクテイストというか洗練された味に対して、バレンシアはまさに海の産物といった感じでがっつりとした味。好みはあると思いますが、僕はバレンシア産の方が気に入りました。あと、ウニなんかも食べましたが、塩味ががっつり効いておいしかったです。



市場の後に、近くに古い建物があったので行ってみると、それが世界遺産の絹の商品取引所でした。入場料が2ユーロだったんですが、近くにTourist Cardの端末が。聞くと24時間の間、ワインが2杯、タパスが二つ、地下鉄とバスが乗り放題で、市内の博物館などもこれでフリーで入れるか割引が効くとのこと。15ユーロ。これは破格!と思い、市役所の中にある観光案内所に行き、購入します。
その窓口のおばさんが本当に親切な人で、いろいろとおすすめの場所を教えてくれる。バスの乗り方なども。ただ、月曜日は博物館は休み、また洪水の影響で地下鉄も一部は除いて運休とのことで、ちょっとだけカードの効力は限定的。そこでおばさんに、自分は大学教員なのですが、経験として洪水の被災地で行っても迷惑じゃない場所はないですか?と効くと、La Torresというバルセロナ市内で被害にあった場所はバスで一本で行けるからいいのでは、ということになり、27番のバスに乗って被災地に行きました。



ニュースで見たような風景からは少し復興が進んでいるように見えました。家屋の中には土が残っていますが、たぶん、流れたであろう家財道具などはすでに処分されていて、流れた車も近くの広場にまとまっている。ただ、昔、阪神淡路大震災の時に、支援物資を持って神戸に行った時のような、被災地独特の空気感がありました。炊き出しやボランティアセンターもあり、そこでは水や簡易な食事も配られています。警察官の姿が目立ちます。
バスで向かったんですが、バスの中には買い出しにバレンシアの中心街に向かっている人もいたように思います。この風景は、被災地と川を挟んだ対岸では全くことなります。一部だけが甚大な被害を被り、それ以外の地域は無傷。そのため、被災地の方も比較的容易に物資も手に入るのでしょう。人的被害や物的被害。それは計り知れないものがあるでしょうけれども、復興は着実に進んでいる。
そして、再び、同じバスに乗り、中心街に向かいます。サンタマリア大聖堂に行きました。



バレンシアを象徴する教会です。中には壮大な空間が広がり、所蔵する宝物は歴史の輝きが見られるものでした。バレンシアの人々が祈り続けてきた場所です。そして、このあたりの周辺は昔からの中心街で、旧市街地といえる場所です。バレンシアは一時はスペインの臨時政府の首都がおかれるなど、スペイン第3の都市といわれるのが納得の壮大な街並みでした。



そして、夕方の会議のために、ツーリストカードを活用して、バスに乗ってホテルに戻るので最寄りの駅からホテルに帰るまでに、芸術科学都市を外から見ることになりました。






なんとまぁ、壮大な風景なのでしょうか。近代建築、現代建築がめざそうとした大空間がそこにはありました。
災害が起きたバレンシア。しかしそれは一部の地区だけで、多くの場所は被害なく。その一方で国際的な学会などのキャンセルで観光業に関わる人々には大変な日々が訪れているようです。観光とは何か。それを改めて考えたい。
27日の授賞式には、世界各国から受賞者やジャーナリスト、そして観光映像祭の関係者が集います。この時期にこのメンバーがここ、バレンシアに集まった意味を考えてみたいと思います。
この度は、今回Youtubeにあげた映像の中に入っています。よろしければ見てください。
木川剛志
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